月夜に

ちょっとした仕事の関係で帰宅が遅くなった。
月明かりの中、駅から自宅へ歩いていくと、近所の川にかかる橋の上で、一匹の蛍が飛んでいた。
一匹だけだったが、太い蛍光ペンでぎゅぎゅっと暗闇に線を引くように、力強く、気高く、そして優雅に飛んでいって、見えなくなった。
時間にすれば、数秒のことだろう。でも、僕の目には暗闇に刻まれた光の残像がしばらく残っていた。
多分、明日はもう少し多くなっているだろう。
6月は蛍の月だ。
一年を通して、ほんのわずかの時間だけ輝く彼らの季節を邪魔することなく、
ささやかながら神々しい光の乱舞を楽しみたい。